2025年の計画の一つがオーストラリアのブリスベンへのロングステイだった。関空⇔ブリスベンのLCCジェトスターの航空券は、計画後できるだけ早く購入することを心がけた。
ブリスベンの滞在先は国際結婚をした元同僚の友達宅。家内とともに2週間泊めてもらった。今回は現地事情に精通した友達宅が宿泊先なので、調べることに時間をさかれることなくゆっくり過ごすことができた。
友達は日本人学校にも勤務経験がある元教師、ご主人はブリスベンの元麻酔医である。住まいは高層ビルが立ちならぶ中心部から20分ほど離れたアップダウンが多いCamp Hillという住宅地にあった。区画も道路も広々していて、家の敷地は約250坪。車庫が家と一体になったつくりで大きな庭があった。
関空-ブリスベン間は約8時間半のフライト、時差1時間。150年ほどの歴史で移民が多く、蛇行するブリスベン川の河口に発達した都市である。亜熱帯気候ではあるが、滞在した11月は過ごしやすい時期であった。2032年にオリンピックの開催が予定されていて、あちこちで建設中のクレーンが見られた。
【ブリスベンの乗物情報】
公共交通機関のバスや列車、トラム、ボートは1回の乗車が50セント(2024年~)という超お得な値段であった。(空港⇔中心部の移動は異なる)地球の歩き方やグーグルマップを有効に活用して、公共の乗物を利用するとブリスベンをお得に概観することができる。
ブリスベン川のボート乗場からシティキャットCityCatに乗船し町を眺めた。乗場は左岸右岸にいくつもある。マップを見ながら下流から上流まで乗船すると地理感覚がつかめる。友達が用意してくれていたGo-card(交通カード)を使用した。クレジットカードの利用もできる。
マウントクーサの展望台Mt.Coot-tha Lookoutから町の様子を一望すると、ブリスベンの全体がつかめてよい。中心部からバスで西へ約40分。空港やCBD(中心のビジネス地区)、蛇行したブリスベン川など広範囲に見渡せる。
有名なゴールドコーストへは車を利用すると約1時間で行けるが、列車とトラムでも行ける。車窓からの眺めを楽しみながら2時間あまりかけて行った。車内は清潔で静かだった。グーグルマップやトラムの路線図から乗車駅や時刻を調べることができるので問題なく往復できる。
【滞在中の過ごし方】
友達が滞在中の日程表を考えてくれていて、天候と相談しながら日程をこなした。友達夫妻は私たちが来たことで遠出の機会が増えたと喜んでくれた。車で北のサンシャインコーストのヌーサビーチ(一泊二日)や南の山間部のラミントン国立公園の野鳥がいるオライリーにも出かけた。また、夜にOUTBACK SHOW(馬と開拓の歴史的生活を再現したショー)を見に行った。ブリスベンは自然や体験的なアクティビティで楽しめるところがたくさんある。
また、友達夫妻の日常生活に関わるところへも車で連れて行ってもらった。スーパーWoolworthsやcoles、ショッピングモールCarindale、ホームセンター、リーズナブルな外食の店、高齢者の交流施設、日本庭園のある植物園など、私たちだけでは行けないような場所に連れて行っていただいた。
毎日夕方には1時間ほどワンちゃんの散歩に同行し、毎回住宅地内のコースを変えて話をしながらアップダウンの道を歩いた。ユーカリの森に野生のコアラがいることを示す看板があったが、コアラを見つけることができず残念だった。
友達夫妻は人との交流の機会を考えて、毎週麻雀の日を入れていた。友達同士で集まり麻雀をするそうだ。1回だけだが、麻雀を覚えたオージーのご主人を交えて麻雀を楽しんだ。まさかブリスベンで麻雀をするとは思ってもみなかった。
芝刈りや庭の植物の世話、ゴミ捨て(各家に赤青黄の分別ボックスがある)の手伝いを体験した。ゴミの回収は、決まった日に家の前の道路脇に分別ボックスを出しておくと、大きなゴミ回収車(一人で乗車・操作)が回ってきて、アームを伸ばして収集するシステムになっていた。家の前の道路が広いからできるように思った。
【宿泊と飲食に関すること】
今、円安と物価の上昇により、長期の海外ロングステイのハードルは高くなった。今回は友達宅に宿泊したので宿泊経費はかからない。
私たちの海外での滞在型空旅はBooking.comやAirbnbを利用して、節約と健康を考えてキッチンや電子レンジがついた部屋を選ぶようにしている。ちなみにBooking.comでブリスベンの便利の良い中心部のアパートを2週間利用で検索してみると相当な宿泊費用であることが分かる。
滞在中の食事は、朝はパン食、昼は外食、夜は日本食と洋食が交互であった。友達はご主人の健康を考えて、できるだけ日本的な食事を作っているそうだ。夕食時には日本から持参した日本酒「獺祭」や梅酒の食前酒で乾杯をした。味噌汁や紅白なますなど日本的なものもいただき胃袋は落ち着いた。日本食の食材の購入は近くのショッピングモール内の韓国の店で調達しているそうである。
ブリスベンは移民が多いので、いろいろな国の食べ物の店があった。寿司(各種の巻物とサーモン握り)を売っている店があったので、試しにパック寿司を買って食べてみた。クオリティは高いとは言えないが、他の食べ物より食べやすかった。
ちょっとしたレストランで食事をすると高くつく。2人で豪ドル50~100(日本円約5000円~10000円)くらいの出費は必要だ。オーストラリアの時給は、日本の2.5~3倍だから外食もスーパーでの買い物も高いのは当然である。
【車に関すること】
ブリスベンのあるクインズランド州では車検や免許の更新制度はないそうだ。友達夫妻は製造から18年のホンダアコードに乗っていたが、定期的な検査を受けていた。オーストラリア製の車はなく、すべてが輸入車だそうだ。日本、アメリカ、ドイツ、韓国、中国など各国の輸入車が目についた。ガソリンや軽油の価格は欧米より安く、日本より少し高目である。軽油がガソリンより高かった。多少の飲酒もOK(反対意見もある)ということに驚いた。
左側運転は日本と同じなので、グーグルマップを利用すれば郊外の道路は運転しやすいように感じた。中心部は一方通行が多くあり運転するには慣れが必要である。信号機のあるところは少なく交差路はランドアバウト(環状交差点)が設けられて、右側の走行車両優先で進むルールである。
ブリスベンから高速道路のような幹線道路M1を走ると、南のシドニーに12時間で行ける。有料道路はあるがM1は無料である。キャンピングカーをよく見かけた。キャンピングカー(モーターホーム、牽引トレーラー)でオーストラリアを一周した人の話によると、景色も食もそんなに変わらないそうだ。日本は狭い国土ではあるが、歴史があり景色や食べ物、温泉など楽しめ、くるま旅には条件がよいように思われた。
【ジェットスターの機内の中で】
関空⇔ブリスベン直行便の座席は往復とも足元の広いエクストラ・レッグルーム・シートを選択した。20席ほどのビジネスシート(フルフラットのシートではなかった)もあった。
往路はナイトフライト。隣はブリスベンに住む日本人男性だったので、日本語でブリスベンや日本について話を聞くことができた。セールの時にいち早くこの座席を確保するそうである。スムーズな入国のやり方、おすすめの観光地、ブリスベンの食べ物の店、日本のインバウンドへの対応など、多岐にわたりいろいろな話を聞いた。参考になる情報を得る機会になった。
復路は昼間のフライト。隣はイスラム系のオーストラリア人の若い男女のカップルだった。奥さんはスカーフをかぶっていたので、「アッサラームアライコム」とあいさつしたところ、笑顔でアラビア語で返事が返ってきた。英語で話すと奥さんは日本語で返してきた。トロントの高校と大学で日本語を学び、日本への渡航経験があった。ご主人は英語とアラビア語を話し、インドにルーツがあるそうだ。「一期一会」と日本語で話しかけてきたのには驚いた。ノートパソコンを開けて日本のイスラムの研究者の名前を伝えてきた。
二人はトロントで25年、ブリスベンに移住して10年で、奥さんの仕事は大学の心理学教師で、日本語が話せるので、大学の休みのこの時期に6人グループのリーダーとして、2週間の日本旅行に行くと言っていた。
2人とも機内の座席で私に断りを言った上で祈りを始めた。若い時に駐在したシンガポールやモスリムの留学生を教えた経験があったので、違和感なく有意義な時間を過ごすことができた。出会いが世代や国を超えて交流に発展することもある。70歳を超えたが、異文化に触れる経験は心をフレッシュに保つエネルギーになる。
ブリスベンは治安良し、チップ不要、外出先でのトイレ使用料不要、落書きやゴミはほぼなし、路上生活者なし、し尿臭さなし、飲食店での飲み水無料、公共のバスや列車は一回50セント(約50円)など欧米の都市と比べてメリットがあった。しかし、為替レートの関係もあり物価は高く、外食は日本の2~3倍はかかる。タクシー利用や観光ツアーにはそれなりの経費が必要である。
成田や関空から直行便が就航しているためか、中心部では日本からの修学旅行の高校生を見かけた。かつてのロングステイのブームは過ぎた感はあるが、ロングステイ候補地の一つのように思われた。
来年2026年はスターアライアンスの世界一周チケットを2回に分けて利用して、再び滞在型の空旅をする予定である。
(登録ロングステイアドバイザー 黒田明雄)








